PLANT MORPHOLOGY
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イネの葉の初期発生に関与する遺伝的制御機構
伊藤 純一
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2003 年 15 巻 1 号 p. 8-17

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抄録
要旨:イネの葉は帯状であるが3つの軸に極性化した複雑な構造をとっている。しかし、イネ科の葉の概形はシュート頂分裂組織(SAM)における葉の始原細胞の分布によって大きく左右され、イネ科の葉の形態形成の理解のためにはSAMにおける葉の始原細胞の決定機構の解明が重要である。shoot organization(sho)変異体は発芽後に特徴的な糸状の葉を分化する。この時のSAMにおける葉の始原細胞の分布を、未分化細胞のマーカーであるOSH1の発現パターンで観察したところ、sho変異体のSAMでは細い葉を分化するにも関わらず、野生型より多くの細胞が葉の始原細胞として存在していた。またsho変異体の多様な葉の表現型は葉の中央-葉縁方向の異なる領域が独立に伸長したものであり、イネではこれらの領域は独立に制御されていることが明らかとなった。sho変異体の表現型は胚発生でシュートを分化しないshootless変異体の弱いアレルと極めて類似しており、これらの遺伝子は共にSAMの維持と葉の初期発生に重要な役割を果たしていると考えられる。
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© 日本植物形態学会
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