PLANT MORPHOLOGY
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コケ植物のγチューブリン
峰雪 芳宣嶋村 正樹
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2004 年 16 巻 1 号 p. 71-82

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抄録

要旨:γ チューブリンは中心体に局在する代表的なタンパク質である。動物の中心体では、γチューブリンを含むタンパク質複合体が微小管重合の種となる。一方、被子植物ではγチューブリンが存在しているにもかかわらず微小管形成の開始場所は分散しており、中心体の様な明確な微小管形成中心(MTOC)の構造は見られない。コケ植物では、他の生物では見られない幾つかの特徴的な微小管装置が知られており、陸上植物が中心体型から被子植物型のMTOCに変遷していく過程でのγチューブリンとMTOCの機能の進化を考える上で重要な鍵を握る分類群と考えられる。そこで本研究では、まず、タイ類(コケ植物)のγチューブリン遺伝子を単離し、その特徴を比較した。次に、コケのγチューブリンと思われる約55kDaのポリペプチドを認識できるG9抗体を使い、中心体を持つ紡錘体、極形成体を持つ紡錘体、四極微小管系等、コケの様々な微小管装置におけるγチューブリンの局在を比較した。その結果、これらコケの特徴的なMTOCにもγチューブリンが局在することが分かった。また、ケゼニゴケ(Dumortiera hirsuta; タイ類)の減数分裂進行に伴うγチューブリン局在の観察から、γチューブリンの局在が減数分裂進行に伴って変化するMTOC周期に従ってその局在を変化させることも分かった。ケゼニゴケの減数分裂では、前期に色素体表面が、終期には核表面がMTOCになる。このオルガネラ表面に局在するγチューブリンは、微小管阻害剤オリザリンで微小管を破壊しても、あるいは、実験的に色素体や核を単離しても残っていた。これらの結果を元に、陸上植物のγチューブリンとMTOCの進化について考察する。

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© 日本植物形態学会
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