PLANT MORPHOLOGY
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水生被子植物カワゴケソウ科のシュートの形態形成および進化に関する研究
厚井 聡
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2005 年 17 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

要旨:カワゴケソウ科は水生の被子植物で,その形態は非常に特異である.特に,いくつかの種では茎頂分裂組織を欠いているとされてきた.しかし,茎頂分裂組織の有無は研究者により解釈が分かれていた.本総説では,カワゴケソウ亜科を用いて行われたシュートの形態形成の詳細な解剖学的観察について紹介する.カワゴケソウ亜科のシュートの先端では,向かい合う最も若い2枚の葉は互いに密着しており,間に茎頂分裂組織が存在しない.アメリカ大陸に分布するカワゴケソウ亜科では葉の基部から新たな葉原基が発生する.さらに,アジアに分布する種では,2番目に若い葉原基基部の細胞が液胞化して離脱し,加えて若い2枚の葉の間で組織の解離が起こり,内部から葉が発生する.一方,トリスティカ亜科とウェッデリナ亜科には茎頂分裂組織が存在し葉を作り出している.系統関係を考慮すると,カワゴケソウ亜科の祖先で茎頂分裂組織を失った後,アジア・オーストラリアのクレードが進化した時に特異的な内生発生という葉の形成様式を獲得したと推定される

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© 日本植物形態学会
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