PLANT MORPHOLOGY
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形態進化の理解のために分子系統樹はいかに役立つか
村上 哲明
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1996 年 8 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

特定の形態形質だけをいくら精度を上げて観察したとしても、あるいは仮にその発生の分子メカニズムまで完全に理解できたとしても、その形態形質の進化の歴史・過程が自ずと理解されることはあり得ない。もし形態進化を科学的に議論したいと考えるならば、外部基準としての系統樹が必要不可欠である。そして、信頼性の高い系統樹を得るには分子情報(DNAの塩基配列情報)を用いるのが現時点では最も効率がよい。したがって、まず分子系統樹を作成し、それに自分が問題にしている形態形質情報を最節約配置することによってその進化を議論するのが標準的な「形態進化」の研究戦略である。さらに、分子系統樹をもとに進化的観点をもって形態を観察し直すことで、形態形質そのもの理解も深められる可能性がある。以上の2つの意味で、分子系統樹は形態進化の理解するために有用である。

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© 日本植物形態学会
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