公共政策
Online ISSN : 2758-2345
セッション2「法制度化と環境政策」
自治体の環境政策法務自治体環境行政の現場から
田中 充
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 1998 巻 p. 1998-1-012-

詳細
抄録

1960年代の公害問題への対応を契機として,地方自治体は体系的な環境行政を整備し,展開するようになった。その後約30年の経過の中で,自治体は地域の課題に対応するため,公害防止条例や環境アセスメント制度など個性ある制度づくりを進めてきた。そして90年代に入り,地球環境問題が主要な政策課題として登場してきた状況下で,環境基本条例や環境基本計画等のように自治体が政策体系を掲げ,市民参加のもとで推進する動きが広がっている。加えて,地方分権が本格化するに伴い,自治体は地域の課題に対応できる政策能力を備え,市民の意思を実現する行政制度を確立していくことが急務となっている。

本稿では,環境基本条例等のもとで総合的環境行政を展開している川崎市を例に,政策法務の実態を報告する。第1章では,環境問題において自治体が果たす役割を展望した上で総合調整,政策立案,市民参加という三つの特質を最大限に活用していくことが大切であることを指摘する。第2章では,行政現場における政策法務の取組として,法律等の運用に係わる運用法務,自治体の立法権に基づく立法法務,訴訟をとおして自治体政策を主張する訴訟法務に分けて論じる。第3章は,川崎市環境基本条例制定の経緯を振り返り,政策法務の視点から市が基本条例に意図した内容を紹介する。第4章では,具体的に環境基本条例の内容と運用状況を述べ,自治体環境行政の実態を報告する。最後の第5章は,自治体環境行政における政策法務,とくに行政実務からみた課題について論じる。

著者関連情報
© 1998 日本公共政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top