1998 年 1998 巻 p. 1998-1-011-
地球環境の時代にあって,政府省庁機関Vs.環境自治体・環境NGOという,環境政策をめぐる新しい対立図式が生まれている。この中で,議会,政党という伝統的な政治アクターの役割が衰退してきている。議会・政党は,中央でも地方でも,利益団体(許認可行政)や利権構造
(公共事業)など伝統的な利益配分政治に取り込まれており,そこからの転換は容易ではない。欧米では,緑の党の成立や環境市民運動の発展により,環境政治は議会・政党政治の中に重要な地位を確保した。逆に,環境問題の政治争点化が議会・政党革新に寄与したともいえる。日本では,こうした「新しい政治」は,行政(環境自治体)と消費者運動(生協運動)に受容された。とくに自治体行政は,第1に,企業との公害防止協定という非法制的手法によって,第2に,市民参加や環境基準において国の制度よりも進んだ環境基本条令を制定することによって,主導的な環境主体として登場してきている。議会・政党の領域では,環境派議員というごく少数の議員の個別的な活動が見られるだけである。住民投票が決議機関になってくる。
環境問題も民主主義の課題として設定されないと,多様な市民が参加し,社会全体を変えることは困難である。逆に,こうした挑戦が会派中心の議会や集権的な政党システムを改革する契機となる。政党は,ネットワーク型組織論と市民主権の理念に立つローカル・パーティ(地域市民政党)へと再編される。民主主義も,代議制民主主義の優越から,市民参加型行政,住民投票などの直接民主主義,ローカル・パーティ,NPO/NGOなどの市民組織の間での,相互活動的な民主主義へと変容する。