官民関係の改革に際しては,その国における国家-社会関係を検討することが必要である。日本では国家と社会が相互に浸透しあい,きわめて融合的な官民関係が形成されているため,規制緩和等によって国家領域を縮小するという場合にも,量的な縮小だけではなく質的な縮小が要求される。すなわち日本の官僚制が割拠制と拡張性を特徴としているため,一方で設置法体制により社会全体を分割して各省庁が推定管轄領域を確保するともに,その領域内においては,丸抱えした社会的アクターにたいして半官半民組織を窓口として,政策介入を無限定に行うという現象が見られる。そこでは公的な役割の社会的アクターへの浸透と,官僚制への直接的な利益表出が対になって機能している。また地方政府が国家の政策実施機関であり,同時に地方を代表する機関であるということは,中央政府との関係で半官半民組織と同様の扱いを受けていることを意味する。そこで規制緩和においては,企画立案・監督・検査の諸機能を同じ組織が担い,かつ官庁に包括的な推定管轄権が与えられるという状況を変革する必要がある。また民営化は公的機能を目的別に再定義するという意味で,情報公開は省庁の領域内の情報を一般化するという意味で官民関係の変革に寄与する。また司法的紛争解決機能の向上が必要とされるほか,官民関係の変革が日本における市場的な競争のあり方を変えるという側面がある。