本稿では,現行憲法施行後の第1回国会(1947年)から第144回国会(1998年)まで,半世紀余にわたって提出された全7792本の内閣提出法律案(「閣法」)について,データベースを構築した。立法過程の実際状況を捉えるため,継続審議や臨時国会提出法案も扱えるよう日程値・日程間値という新しい指標を作成した。その上で,短期的な変動をならして中長期的な趨勢をとらえるべく,総選挙にはさまれた期間(選挙期)ごとに各指標の時系列変化をみる。
こうした通時的検討によって,1970前後を境として法案審議期間が長期化する反面で,審議の回数が低下していくことが見て取れる。すなわち,議論をしないで審議を引き延ばすという国対政治は,1955年に成立した自民党政権や同年に改正された国会法に固有な現象ではなく,いわんや国会という制度に必ずつきまとうものでもないのである。それはあくまで歴史的に形成され,1970年前後に与野党間の政治的均衡として確立したものであったことを強調する。さらに連立期に入ると,つるしをはじめとする審議期間のさらなる長期化と審議回数の低迷という形で,国会審議状況が一層悪化していることを明らかにする。
最後に国会改革の方向として,討議的アリーナとしての国会という在り方について言及する。