本論文は,1980年から1998年の期間に提出された議員立法の現状分析から,議員立法の制度や慣行の問題点を指摘し,具体的な政策提言を行ったものである。90年代以降の議員立法の特徴としては,1)議員連盟や党のプロジェクトチームによって立案された超党派型の議員立法が増加していること,2)野党提出の議員立法では,政府与党に先行する政策先行案や政府与党案の対抗案の提出件数が増加し,政府与党に代替する政策プログラムを明示する手段として議員立法が活用されていること,3)野党提出の先行案の委員会での実質審査が行われたり,対案が修正協議で実質的な修正に取り入れられるなど,野党の政策影響力が増大するようになっていることが指摘できる。しかし,依然として,野党の議員立法が審議される絶対量は少なく,成立した議員立法もその立法過程は不透明である。また,衆議院における法案提出前の機関承認の慣行が,多様な議員立法の提出を阻害したり,法案審議における政府委員による官僚主導などの問題点が存在している。筆者は,こうした問題点に対して,少数党提出の議員立法の審議の実施のための関連法案の一括審議の拡大や立法計画の策定,議員立法の立法過程のディスクロージャー,機関承認を受理要件とする慣行の廃止や,超党派議員立法への参加に対する党の締め付けの緩和,大臣等と議員立法発議者の双方向の質疑・答弁による討論型審議の採用,質問制度の活用による行政監視・情報公開機能の確保などの制度改革の提言を行った。