公共政策
Online ISSN : 2758-2345
自由論題報告
政策変容における政策分析と議論―政策志向学習の概念と実際―
秋吉 貴雄
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2000 年 2000 巻 p. 2000-1-023-

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抄録

70年代以降政策科学者は,政策分析による知識が政策決定において果たす役割という視点を政策過程の理論モデルに加えることの重要性を指摘してきた。近年わが国では理論モデルによる政策過程分析の重要性が認識されているものの,政策過程の動態を説明する政策志向学習(Policy-oriented learning)等の概念は必ずしも注目されていない。

これまで知識活用(knowledge utilization)の側面から,政策分析が果たす役割として,[1]啓蒙(enlightenment),[2]唱道(advocate),という2つが指摘された。サバティアとジェンキンスミスはこの2つの役割を明示的に理論モデルに取り込み,併せて「(グループの信念を政策に実現するために)思考及び行動を規定する信念システムを変化させる」という政策志向学習の概念を提示した。

本研究では決定的事例としてわが国及び米国の航空輸送産業における規制緩和を取り上げ,各々の政策決定過程の,[1]規制緩和のイシュー化,[2]グループ間の政策議論,[3]規制緩和法案の策定,という3つの局面に焦点を当て,規制緩和推進を志向するグループと既得権益維持を志向するグループ間の政策志向学習の様態について考察している。

事例の分析結果から社会経済状況及び制度的状況等の変化のみでなく,政策サブシステム内部での政策志向学習が政策変容の過程及び内容に影響を及ぼすことが指摘される。しかし同時に,[1]政策志向学習がもたらす短期的変容,[2]グループ間の政策志向学習の発生要因,という二点に関して政策志向学習の概念を修正する必要が指摘される。

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© 2000 日本公共政策学会
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