2000 年 2000 巻 p. 2000-1-022-
本稿では,まず,公共政策に関わる評価の代表的な類型を,事前政策分析,事後的政策分析,業績測定,実施アセスメントの4つに整理する。次いで,政策分析の機能とされる事前および事後的な政策決定を業績測定に基づいて行おうという最近のわが国で頻繁に見られる試みの典型的事例として,三重県の事務事業評価システムの改良を紹介する。その上で,業績測定による政策決定というアイディアに対する政策評価研究者の批判を整理する。政策分析と業績測定の重要な相違点の一つは,政策分析が政策と純インパクトの因果関係の解明を行うのに対し,業績測定は行わないことである。両者は測定されるデータの内容およびデータの測定方法という二つの点においてまったく異なっている。そこで,政策評価研究者たちは業績測定を政策分析の代用品とすることを制度設計者が陥りやすい陥穽として強く戒め,業績測定に加えて政策分析を行うことを提言している。しかしながら,政策評価研究者の議論は制度設計者には説得的とは言えず,政策分析の必要性についてより説得力ある議論を提示することが政策評価研究にとっての課題であるといえる。