実践政策学
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大手民間企業の文系修士新卒採用の抑制に関する研究
二宮 祐
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2025 年 11 巻 2 号 p. 359-366

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抄録
日本における大学院進学率は特に文系の分野で依然として低水準にとどまっている。本研究はその背景にある要因として、大手企業における文系修士の新卒採用実績を分析する。東洋経済新報社が発行する『就職四季報』2010年度版、2015年度版、2020年度版、2025年度版を用いて検討した結果、企業規模にかかわらず文系修士を採用する企業の割合に増加傾向は認められなかった。採用実績がある場合でも、その数は毎年1~2名が一般的である。業種別では、コンサルタント・シンクタンク、エネルギー、情報通信で比較的高い採用率を示したが、他の業種では2~4割にとどまった。仮説検証では、①文系修士を一度採用した企業が継続的にその採用を行う傾向はない、②博士を採用する企業は文系修士も採用しやすいものの、そのような企業の割合は高くならない、③「訓練可能性」が関係する平均勤続年数と文系修士の採用の関連は必ずしも明確ではない、④多様な大学院から採用する傾向は否定され、採用実績は旧帝大や有名私立に偏っていることが明らかとなった。これらの結果は日本企業の「メンバーシップ型雇用」を背景とする文系修士の専門性や「訓練可能性」が評価されない現状を示している。「高度専門職業人」の養成に関する文系大学院と民間企業との認識をすり合わせる必要を提起する。
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