抄録
大阪市では2015年5月17日に「特別区設置協定書」の是非を問う住民投票が実施された。そしてこの約1ヶ月前には、大阪市民を対象とした「特別区設置協定書」に関する住民説明会が計39回開催されたが、説明会全体を通した市側の説明内容の系統だった検証はなされていなかった。そこで本研究では、説明会での事務局からのあいさつ、事務局による説明、市長による説明を対象にテキスト分析を行い、市側が市民に適切な説明を行ったのかどうかを検証した。その結果、市民が絶対に知らされなければならなかった「賛成多数なら大阪市が廃止されること」を、事務局も市長も一度も市民に口頭では説明しなかったことが分かった。特別区の財政については、事務局も市長も「特別区設置協定書」には記載されていない長期財政推計を根拠に、十分運営することができ新しい住民サービスも可能であると説明し、市長が「大阪都構想」という語を計1,626回使ったことも分かった。また、市長は「説明パンフレット」は「特別区設置協定書」・議会で承認された・唯一の公式資料・国のチェックを受けた、という4種類の虚偽説明をしたことも明らかになった。そして、事務局による説明、市長による説明、「特別区設置協定書」の類似性を調べたところ、事務局による説明と「特別区設置協定書」は用いられた語の量的にはかなり類似しているが、市長による説明はこれらとの類似性がなく、しかも市長による説明は回を経ると変化したが、事務局による説明や「特別区設置協定書」の内容には近づかなかったことが分かった。