抄録
愛知県豊田市では、主に通勤時の交通渋滞に対応するため、四半世紀近くにわたり継続的にTDM施策に取り組んできた。この歴史を振り返り、継続的に実施されるに至った要因のひとつと考えられる、TDM施策の実践組織に焦点を当て、豊田市における施策展開を詳細に描写することで、豊田市のTDM施策の継続的展開に実践組織が果たした役割を考察した。その結果、実践組織が継続的に存在することによって、施策実施の母体(あるいは受け皿)となったこと、そして、社会実験や事業所への啓発を実施することで、豊田市における民間独自の活動が実現し、それらが継続していることを明らかにした。そして、豊田市における今後の展開について考察するとともに、実践組織による継続的なTDM施策実施の要点として、「緩やかな組織運営」と「参加団体の階層化」、時代に合わせた活動や組織の「しなやかな改編」の3点を整理した。これらの知見を踏まえて、引き続きTDM施策の取り組みが継続することが重要であることを示した。