抄録
近年、自動運転システムの開発が進み、その社会実装がさかんに議論されている。こうした新しい交通モードの受容は、我々の暮らしに多大な影響を与えることが想定される。新交通モードが人々の生活に与える影響を検討するため、本研究では、過去に導入された交通モードの社会的受容のプロセスに注目することとした。具体的には、新聞を閲覧することを通じて、明治から戦前における子供の交通に纏わる諸問題を概観した。その結果、明治・大正期において、子供の交通事故が非常に多く、交通事故による死亡者の半数が、14歳以下の子供であったこと、そして、路上遊戯中に起こる事故が多く発生していたことが確認された。道路は子供にとって遊ぶ場所であったが、馬車や電車、自動車といった交通モードが急速に導入されたことによって、数多くの子供の交通事故が発生したことが考えられる。そして、こうした子供の交通事故のソフト対策として、路上遊戯の取締の強化や、「交通道徳」の普及のためのイベントが行われていたことが確認された。また、1920年に公布された道路取締令には、子供の一人歩き、路上遊戯を禁止する項が設けられたことが確認されたが、その禁止が現在の道路交通法にまで引き継がれていた。一方、ハード対策として、公園の整備や、押しボタン式信号機の設置、遊園街路の計画などが行われていたことも確認された。