実践政策学
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地方自治体による鉄軌道政策の成果と課題に関する研究
森 雅志本田 信次高森 長仁谷口 博司中川 大
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2022 年 8 巻 1 号 p. 5-20

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抄録
鉄軌道は都市づくりにおいて最も重要な要素の1つであるが、わが国ではその計画や運営は、民間企業である鉄軌道事業者が主体となっており、地方自治体が責任をもって政策的に進める制度とはなっていない。そのため、民間事業としての採算性が重視され、経営の厳しい地方鉄道路線においては減便や値上げなどのサービス低下が続くとともに、自動車に依存した低密度な都市構造の拡大を招いてきた。このような都市構造の変化は、都市施設の維持管理コストの増大など将来に大きな負担をもたらす可能性が高いため、富山市では2005年前後から都市づくりの発想を大きく転換し、全国に先駆けて「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を目指すこととして、その中心となる事業として鉄軌道の利便性向上策を「市の政策として」積極的に推進することに踏み切った。本研究では、実際にそれらの事業に取り組んできた筆者らが、わが国では当時においても現在までの間においても他に例がないと言えるそのような施策に踏み切るまでの経緯やその後の成果をその経験に基づいてとりまとめる。富山市の鉄軌道政策は都市経営戦略としての積極的な投資であり、赤字補填的な支援に留まっている多くの他都市の公費負担とは全く異なる考え方であること、実施した政策の内容も他都市ではほとんど実施されていない施策が多いことを示したうえで、その結果として得られた成果を整理してその意義について考察する。また、その実践過程においては、わが国における鉄軌道政策の課題について実感してきたことも多いため、それらを整理するとともに、今後のわが国における鉄軌道政策に向けての提案を取りまとめる。
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