抄録
IgA血管炎は発熱や炎症反応の上昇は軽度のことが多いが,IgA血管炎の再発時に高熱と炎症反
応高値を示し,敗血症との鑑別を要する症例を経験した.
症例は4歳7か月の男児.4歳1か月時にIgA血管炎を発症し,腎炎の合併はなく外来で経過観察し
ていた.6か月後,発熱,腹痛,嘔吐と足関節痛のため,急性胃腸炎疑いで入院となった.便潜血
陽性,WBC 26,300/μL,CRP 22.18mg/dLと高値,超音波検査で右下腹部の小腸壁肥厚と腸間膜リ
ンパ節腫脹,腸間膜脂肪織の輝度亢進を認めた.IgA血管炎の既往があり,腹部症状,関節症状,
腹部超音波所見からIgA血管炎に伴う腸間膜リンパ節炎,脂肪織炎を疑い,prednisolone(PSL)の
投与を開始したが,敗血症も否定できず血液培養施行後に抗菌薬を併用した.PSLの投与を開始後
は速やかに解熱し腹痛,関節痛は改善した.後日,両下肢に紫斑を認めた.抗菌薬は血液培養陰
性を確認したのち終了した.PSLも腹部症状の再燃がないことを確認して漸減した.本症例は紫斑
の出現に先行して,消化管壁に強い侵襲が加わり,腸間膜リンパ節や脂肪織にまで炎症が波及し
た結果,高熱や炎症反応高値で敗血症を疑う状態になったと推測した.IgA血管炎において高熱や
炎症反応が高値の時は,敗血症に対する必要な検査,治療を行いつつ,画像検査で腸間膜リンパ
節炎や腸間膜脂肪織炎などの所見を見逃さないことが大切である.