抄録
RSウイルス重症感染の予防として2002年から特異的なヒト化モノクローナル抗体パリビズマ
ブが本邦で承認され,2013年5日時点でのパリビズマブの適応症は①在胎期間28週以下の早
産で,12か月齢以下の新生児及び乳児,②在胎期間29~35週の早産で,6か月齢以下の新生
児及び乳児,③過去6か月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24か月齢以下の新生児,
乳児及び幼児,④24か月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児,乳児及び幼
児となっている.他方で免疫不全,気道疾患,神経・筋疾患,染色体異常,奇形症候群,在宅
人工呼吸管理の症例などもハイリスクと考えられるが1~3)これらは含まれていない.
本邦におけるRSウイルスの感染実態を明らかにすべく,全国の小児科専門医研修施設および
準ずる施設を対象にアンケート調査を行い,免疫抑制状態にある患児(ステロイド薬・免疫抑
制薬使用,免疫不全,白血病・悪性疾患及び移植など)およびダウン症候群におけるRSウイ
ルスの感染実態を明らかにし,これらの疾患がハイリスクであることを示した4).また,免疫
不全状態の児は米国でもハイリスクとされ保険償還されている地域がある.小児リウマチ学会
および小児血液・がん学会はこれらに基づき,厚生労働省に追加適応の要望書を提出した.「医
療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」による検討の結果,臨床試験が実施され,
2013年8月に追加適応が承認された.
それに伴い適正使用推進を目的にパリビズマブ使用の手引きが[1]免疫不全症([1.1]先天性・
後天性免疫不全症,[1.2]造血器悪性腫瘍・固形腫瘍・骨髄不全症・造血幹細胞移植および固
形臓器移植,[1.3]腎1蔵病,リウマチ・炎症性疾患および免疫抑制を伴う薬剤の使用),[2]ダ
ウン症候群に分けて作成されたのでここに紹介する.