抄録
小児発症全身性エリテマトーデス(SLE)は,その発症に自己免疫機序が関わる慢性炎症性疾患
である.本症の予後を大きく左右するループス腎炎の合併率が90%以上と,成人に比べ多いことが問
題になる.したがって,ループス腎炎の早期抑制を主たる目的として,経静脈的シクロフォスファミ
ド(IVCY)療法による寛解導入とともに,寛解維持療法としてステロイドとアザチオプリン(AZP)併
用療法の有効性が報告され,IVCY療法とともに標準的治療として用いられてきた.
一方で,これらの治療にも不応な例や,副作用のため薬剤の中断を余儀なくされる例が存在し,新た
な治療法が求められている.
当科では,2006年以降重症ループス腎炎を併発するSLEの寛解導入・維持療法としてIVCY療法とと
もに少量ステロイド+ミコフェノール酸モフェチル(MMF)療法を実施し,効果を上げている.
今回,小児重症ループス腎炎を併発したSLEに対するMMFを含めた新しい治療法につき,病態にお
ける作用機序という観点から報告したい.