抄録
当院フォロー中の小児リウマチ性疾患患者26名において骨代謝マーカー(BAPとTRACP-5b)を測
定し,骨密度・副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)投与との関連を後方視的に検討した.TRACP-
5bが年齢・性別の基準値を超えた骨吸収が充進している症例が15例(58%)と多かった.一方, BAP
低値となり骨形成が抑制されている症例は2例(8%)のみであった.骨形成・骨吸収とも抑制される
成人でのステロイド性骨粗霧症とは対照的な結果となった.ステロイド投与の有無で,骨代謝マーカー
に有意な差は認めなかったが,ステロイド投与群で有意に骨密度の低下を認めた.ステロイド投与群
では,薬剤の影響以外にも,炎症性サイトカインや臥床などの要因が骨密度低下に関与している可能
性がある。骨代謝マーカーの特徴からは,骨吸収を抑制するビスホスフォネートが有効な治療選択肢
となると推測される.本研究からは,以下の2点が明らかになった.一つは,小児リウマチ性疾患患
者には骨吸収が克進している症例が多いこと.もう一つは,ステロイド投与例では,骨代謝マーカー
は影響を受けないが,骨密度は有意に低下するということである.治療による骨代謝マーカーの変化
や各疾患の骨代謝マーカーの特徴などを明らかにするため,症例の蓄積が必要である.