抄録
症例は10歳女児.入院2年前から時々右股関節痛を認めていた.3か月前に高度の右股関節痛と可
動域制限を認め,当院へ紹介入院となった.入院時右下肢の筋萎縮と右股関節の拘縮があり,X線検
査では右股関節の関節裂隙狭小化を認めた.MRI検査ではそれに加え,骨髄浮腫の所見,大腿骨頭面
に虫食い状のくびれがあり,臼蓋側にも一部嚢胞形成を認めた. 一方で,少量の関節液貯留はあるも
のの,若年性特発性関節炎(JIA)に特徴的な造影効果を伴う滑膜増生の所見を認めなかった.これ
らの結果から特発性股関節軟骨融解(ICH)と診断した.イブプロフェン内服,ステロイド関節内注
射,リハビリ治療を開始した.治療後症状は改・善し,X線検査上関節裂隙の狭小化の改善も認めてい
る.ICHは大腿骨頭近位部の硝子軟骨の融解により関節裂隙が狭小化し,股関節の可動域制限をきた
す原因不明の疾患である.強い股関節痛と可動域制限を主症状とし,前思春期の女児に好発するため,
JIAの鑑別診断の一つとして重要な疾患であると思われた.