フィナンシャル・レビュー
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公的介護制度における自己負担率と介護利用および健康
大西 宏典
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2023 年 151 巻 p. 181-205

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抄録

公的介護制度における自己負担率については,わが国でも近年度々見直しの対象となる等,その政策的な重要性が増している一方,先行研究が限られており,自己負担の効果については未だ明らかになっているとは言い難い状況である。そこで本稿では,公的介護制度における自己負担率が,サービス利用や利用者の健康状態に与える効果について,先行研究のサーベイを行った。公的介護制度が整備されているフランス,オランダ,韓国,日本の先行研究の分析結果をまとめたところ,概ね自己負担の増加(減少)によってサービス利用が減少(増加)するという結果は一致しており,また,自己負担の変化が利用者の健康状態には有意な効果を与えていないことも,複数の研究で指摘されていることが分かった。他方,自己負担の変化に対する価格弾力性は,国・地域・制度・時期・サービス種別・利用者の属性等によって異なっていることも明らかになった。とりわけ,日本の介護保険において2015 年8 月に導入された2 割負担の効果は,諸外国の先行研究や,医療分野の先行研究と比べても極めて小さかったと考えられるが,今後の研究では,このように国によって,あるいは医療と介護の間で,自己負担の効果が異なるメカニズムについて,解明 していくことが重要な課題である。

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© 2023 本論文著者
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