抄録
最適課税論は課税や給付のあり方に関して重要な知見を提供する重要な研究分野であり,経済学的手法を用いた財政研究のコアともいうべき分野でもある。マーリーズの研究以来,労働所得(就労収入)に係る最適課税論は大きな発展を遂げて来たが,特にここ4半世紀は,社会における経済的不平等・格差や再分配政策へ関心の高まりに呼応するかのように,理論的枠組みの拡張,数量分析の発展,及び,政策問題への応用において以前にも増した発展を見せている。本論では,ペダゴジカルな視点から,この経済学者の間で共通財産となった労働所得課税論について紹介する。