抄録
本稿では,財政・公共経済学の分野を中心に近年応用例が増加している集群推定(Bunching Estimation)法について,その基本的な分析枠組みを説明するとともに,近年の手法の発展および批判について取り上げる。集群推定法はSaez(2010)を端緒とし,課税所得の弾力性を推定する手法として確立されたが,近年ではその応用例は他分野に広がっている。しかし,当該手法の利用方法について日本語での解説を行っている文献は限られており,日本において集群推定を利用した研究は比較的少ないのが現状である。加えて,近年,当該手法に関する分析の拡張や,推定における問題点に関する数多くの論文が出版されている。そこで本稿では,特に課税所得の弾力性に関する文脈から,(1)基本的な分析手法について解説を行うとともに,(2)近年の手法の発展状況と,後続研究で指摘されてきた推定における問題点や課題について紹介する。