霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: P-53
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ポスター発表
ニホンザル生息地内の農地の空間構造
*スプレイグ D. S.岩崎 亘典
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抄録

ニホンザルの生息地域内に農地が入り組んで分布している地域が、日本各地に存在する。そのため、農地はサルの生息地と隣接していることが多く、サルによる農作物被害が発生する要因の一つとして考えられている。したがって、農地の近縁地域における植生は、サルによる被害を受けやすい農地の指標として有効である。また、ニホンザルの個体群維持の指標として、サルの生息地内に、農地など人の影響から遠い、コアエリアの規模と分布を正確に把握する必要がある。面積が広く、広葉樹林が多いコアエリアはニホンザルにとって高質な生息地と解釈できる。あるいは、面積が狭く、針葉樹林が多いコアエリアしか持たない個体群の維持はより難しいと考えられる。本研究では、ニホンザルの主要な生息地である房総半島と紀伊半島を対象に、農地に隣接する土地利用および植生を明らかにした。さらに、農地から 1km 以上の地域をサルの生息地内のコアエリアと定義し、そのコアエリア内の植生を調べた。データは環境省現存植生図を利用した。GISで農地隣接地域として農地から 100m 以内の地域、コアエリアとして農地から 1km 以上の地域をそれぞれ切りだし、現存植生図と重ね合わせた。房総半島と紀伊半島の双方で、森林に隣接する農地が多く見受けられ、農作物被害を受けやすい農地が多いことを確認できた。コアエリアの植生は房総半島と紀伊半島の間で違いがあった。房総半島のコアエリアはかなり狭いながら、コアエリア内の植生には広葉樹林が多く存在していた。紀伊半島のコアエリアはかなり広いながら、コアエリア内の植生には植林など、針葉樹林が多く分布していた。ただし、広狭の差はありながら、両半島において農地が森林地域に入り組んでいるためにニホンザル生息地のコアエリアは非常に複雑な形となっていた。

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© 2004 日本霊長類学会
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