抄録
(目的)アカゲザルは、狭鼻猿の代表的存在であり、ミドリザルと並んで、実験動物としてよく用いられる霊長類の一つである。その解剖学的構造を知ることは、比較解剖学的にも、実験医学的にも重要と思われるが、リンパ節の位置については、リンパ管との関係において数例の報告を見るのみである。ヒトでは大腸リンパ節は上腸間膜動脈・下腸間膜動脈との位置関係に基づいて、臨床上の分類がなされている。そこで、アカゲザルにおいてもこのような分類が可能であるか検証した。
(材料と方法)狭鼻猿オナガザル科マカク属、アカゲザル(Macaca mulatta)雄5例の腹部臓器摘出標本を用いた。盲腸・結腸の間膜を剥離し、動脈とリンパ節を剖出した後、肉眼解剖学的観察を行った。
(結果)結腸は彎曲部が明瞭で、上行結腸・横行結腸・下行結腸を分類できた。上腸間膜動脈は、頭側の枝と尾側の枝に2分岐した。尾側の枝が間膜内を下行するのに対し、頭側の枝はいったん上行結腸に向かい、腸管にそって横行結腸に向かって走行した。上腸間膜動脈と下腸間膜動脈の分布域の境界部は横行結腸の中心ないしやや左側であった。下腸間膜動脈は、上腸間膜動脈と同様に、頭側の枝と尾側の枝に2分岐した。 頭側の枝は横行結腸に向かい、上腸間膜動脈の分枝と吻合した。尾側の枝は4本以上の枝を出し、主に下行結腸を支配した。リンパ節の大半は、腸管の間膜付着部と動脈の分岐部に存在した。存在部位・個数は個体差が大きく、一定の傾向が見られなかったが、盲腸周辺のリンパ節が他の部位に比べて大きいことが特徴的であった。
(考察)結腸領域において動脈の分岐とその支配域には、ヒトとアカゲザルの間で違いが認められるが、腸管傍リンパ節・中間リンパ節・主リンパ節に分類することは可能であり、妥当であると考えられた。