霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: A-07
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口頭発表
野生ニホンザル・オスグループの社会交渉
*宇野 壮春
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抄録

(目的)金華山の野生ニホンザルについて、一つのオスグループを個体識別し、継続的に観察してきた。オスグループを形成している群れ外オスは、通常生活の中で様々な社会交渉を行う。その中で極めて重要と思われるマウンティング(馬乗り行動)について、どのような状況で行われるか、交渉相手によってどう違うか、などの調査を通して、その意味を明らかにする。
(方法)2004年に出産期(5月)、夏期(8月)、交尾期(10月)にそれぞれ100時間のオスグループの観察を目安として調査をした。そして、観察されたマウンティング(以下、M行動と呼ぶ)の状況、交渉相手、その後の行動を記録した。
(結果)調査中に観察されたM行動は出産期に52回、夏期に18回、交尾期に4回の計74回だった。M行動を行った相手はオスグループのメンバー同士とそれ以外のオスに分けられた。また前者のM行動は、メンバーが共に行動している時に行われたものとメンバーが合流した時に行われたものに、後者のM行動は、メンバーと他の群れ外オスとの間に行われたものとメンバーと群れオスとの間で行われたものに分けられた。しかし、状況の違いによって様々なバリエーションも観察された。
(考察)M行動の基本的な要因は緊張の解消にあることは間違い。ただ、M行動は大きく2つに分けることができる。すなわち、ひとつは2個体が接近したときにM行動で緊張を解消し、その後両者は離れる場合、ひとつはM行動が行われたあと、緊張が解消されている状態でなければ行われない行動に移行する場合である。その行動とはグルーミング行動、ユサユサ行動、伴食行動、連れ立ち移動などである。いずれにせよ、群れ外オス間の社会交渉は個々の相互認識や過去の経歴などによっても大きく左右されていると思われる。

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© 2005 日本霊長類学会
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