霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: P-43
会議情報
ポスター発表
テングザルの川渡りと泊まり場の選択性
*松田 一希TUUGA Augustine秋山 吉寛東 正剛
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
霊長類にとって捕食圧は、その形態・行動の進化を考える上で重要である。テングザルの主な捕食者は、水生捕食者のクロコダイルと陸生捕食者のウンピョウである。テングザルは、しばしば川を泳いで対岸へ渡ることが報告されており、その際にクロコダイルによる捕食圧の危険性が高まることが示唆されている。このサルは、夕刻になると必ず川岸の木に戻り眠ることで知られる。陸生捕食者の襲撃に備えて見通しが良く、万一襲撃にあっても川を渡り対岸へ逃れることが出来るため、川岸を好むことが示唆されている。テングザルの行動への捕食圧の影響を調べるため、捕食の脅威が高まる川渡り行動と泊まり場の研究を行った。本研究は、2005年5月~2006年5月にボルネオ島のマナングル川流域で行った。調査対象とした群は、個体識別・人付けされたハレム1群で、川渡りのデータは、対象群のオトナ個体を終日個体追跡した時に記録した。一方、泊まり場は、終日追跡によって確認したものに加え、追跡を行わない日の夕刻に、ボートセンサスで確認した泊まり場も含む。個体追跡による総観察時間は3507時間(♂1968; ♀1539)で、オス90回、メスで65回の川渡りを観察した。両岸から突き出た枝間の距離が短い場所ほどオスとメス双方で、川渡りの頻度は高かった。枝間距離が短いほど、川に落ちずに枝を伝って川を渡れるため水生捕食者の回避に有利で、川に飛び込み、泳いで渡ることに比べても外傷などを受けにくいだろう。調査期間中に対象群の泊まり場を270回(川岸261; 林内9)確認した。頻繁に利用された川岸の泊まり場は、川渡りの場所としても頻繁に利用されていた場所(枝間距離が短い場所)であることがわかった。この結果より、夜間に陸生の捕食者による襲撃を受けても、安全に対岸へ枝を伝って逃れることができる場所が泊まり場として好まれる条件の一つとなっていることが示唆された。
著者関連情報
© 2008 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top