抄録
これまでにカニクイザルにおける加齢に伴う免疫機能の一連の変化を本学会で発表してきた。今回は、老齢カニクイザルの血中に出現する自己抗体の一つである抗単鎖DNA(ssDNA)抗体の出現頻度、出現時期および性状について整理するとともに、老化に伴う自己抗体産生機序の一端を明らかにしたので報告する。
【?T】ウシ胸腺由来のssDNAを抗原とするELISA系を確立し、20歳以上の老齢ザルと10歳前後の壮年ザルとで抗核抗体の出現頻度および抗体価を比較したところ、いずれも老齢ザルで有意に高かった。
【?U】幼児期より数年おきに凍結保存した血清を用いて、三頭の老齢ザルで抗核抗体の出現時期を調査した結果、1頭は15歳前後に、他の二頭は25歳前後に抗核抗体が検出され、以後抗体価は加齢に伴い急激に上昇した。
【?V】老齢ザルの抗核抗体の等電点を解析した結果、ssDNAと反応する抗体には等電点の異なる二種類以上の抗体が混在していることが明らかとなった。
【?W】老化に伴うT細胞機能の低下が様々な免疫機能の加齢変化の要因である可能性が示唆されている。最近自己反応性の免疫応答を抑制する制御性T細胞(Regulatory T cells)の役割が注目されていることから、幼体、壮年、老齢の3年齢群のカニクイザルについて末梢のCD25+/CD4+制御性T細胞のレベルを調査した。その結果、幼体と壮年カニクイザルでは有意な差は認められないが、老齢ザルでは制御性T細胞レベルが有意に低下していた。このことから、老齢カニクイザルでは自己反応性の免疫応答の抑制機能が低下した結果、抗核抗体などの自己抗体が出現する可能性が推測された。