霊長類研究 Supplement
第24回日本霊長類学会大会
セッションID: B-08
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口頭発表
マハレのチンパンジーの採食場面での覗き込み行動は食物の移動を促すか
*藤本 麻里子
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抄録
チンパンジーは相手の数センチから数十センチという至近距離から相手の顔や手元など体の一部を凝視する、覗き込み行動(Peering behavior)を行なうことが知られている。マハレのチンパンジーも様々な文脈でこの覗き込み行動を行なう。覗き込まれた個体は相手を見つめ返すことはほとんどしないが、文脈によってその後に引き続いて起こる行動は様々だ。本発表では最も頻繁に覗き込み行動が観察された採食場面について、覗き込みの後に食物の移動が見られたかどうかについて報告する。マハレのMグループのチンパンジーで、1個体を終日個体追跡する方法で観察した。個体追跡中に周囲の個体同士で生起した覗き込み行動もアドリブサンプリングにより記録した。本発表では、2005年11月から2006年4月の6ヶ月間に収集したデータについて発表する。この期間に観察された覗き込み行動は543例で、うち329例(60.6%)が採食場面で生起した。また、覗き込み行動は覗き込む個体(以下、Peerer)と覗き込まれる個体(以下、Peeree)が1個体ずつの交渉と、複数の個体が1個体を覗き込む交渉があり、329例中前者が266例(80.9%)で、後者が63例(19.1%)だった。このうち、1対1の交渉266例について、食物の移動について分析を行なった。覗き込み行動の後にPeereeの食物がPeererに移動した例は69例(25.9%)だった。覗き込みの後に、敵対的交渉はほとんど見られなかった。食べ物の移動が見られた69例では、覗き込みの後にPeererがPeereeの口元に手を伸ばす、自分の口を近づけるなどのより強い要求行動が見られた。覗き込んだだけでPeereeから積極的に分配が起こる事例はなかった。チンパンジーの採食場面での覗き込みは、「物乞い」する機会を窺うために、とりあえず近接を許容してもらう機能があると考えられる。
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© 2008 日本霊長類学会
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