霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: B-1-1
会議情報
口頭発表
ニホンザル屋久島個体群におけるオスとメスの分布変遷史(予報)
*早石 周平川本 芳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
鹿児島県の屋久島には,海岸部の亜熱帯性照葉樹林から山岳部のヤクザサ草原まで植生の垂直分布がみられ,標高帯間でニホンザルの生態が異なることが知られている。本研究は,この多様な生息環境がニホンザルに与える影響を二つの時間スケールで解明することを主な目的としている。二つの影響の一つはメスを主な対象として,長い時間スケールで分布がどのように変遷したか,もう一つはオスを主な対象として,短い時間スケールで個体の分散がどのように起こっているかである。
これまでミトコンドリアDNAの第2可変域の多型を遺伝標識として用い,多型が見られる海岸部,一様な内陸部という地理的構造がわかった。母系社会をもつニホンザルでは母性遺伝するミトコンドリアDNAの地理的分布は過去の分布変遷を反映すると考えられる。したがって,遺伝的な地理的構造からは,過去の分布変遷において,垂直方向に何らかの制限があったことが示唆された。
2006年から新たに糞試料と組織片試料を採取し,ミトコンドリアDNAの第1可変域と,Y染色体のマイクロサテライト多型の解析を始めた。現在までにオスメス41個体のミトコンドリアDNA第1可変域に4ハプロタイプ,オス14個体のY染色体マイクロサテライトに5ハプロタイプが検出されている。今回はこの地理的分布を報告する。今後も試料採取と分析を進め,これらのハプロタイプの地理的分布を島内全域で解析し,二つの時間スケールで屋久島のニホンザルの系統地理学的特性を明らかにしたい。
本研究は,京都大学霊長類研究所の共同利用研究として実施された。
著者関連情報
© 2009 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top