抄録
3つの異なるアプローチから,「ヒトという生物」と「人間らしさ」という独自固有の精神性の由来と進化を考え,指定討論者を交えて,来場者の皆さんとともに「人間とは何者なのか」を討議したいと思います。
3つのアプローチの第1は,比較ゲノム科学からのアプローチです。ヒトの全ゲノム解読が完了して10年が経過し,研究はさまざまな種を含む比較研究へと移ってき,ました。ヒトの病気,ヒト固有の言語をはじめとする知的能力起源の解明は,ヒトとチンパンジーの比較研究にかかってきています。郷康広氏(京都大学霊長類研究所)から「ゲノムを通して我が身を知る~ヒトとチンパンジーの間にあるもの~」と題して,チンパンジーゲノム研究によって見えてくる「ヒトとチンパンジーの間にあるもの」について講演いただきます。
第2のアプローチは,比較認知科学からのアプローチです。ヒトは他の生物種とは比較にならない大きな脳(特に新皮質)を備え,豊かな精神世界の中で生きています。この独自とも思える心の豊かさのうち,どのような側面においてチンパンジーと起源を共有し,どこにヒト固有なものがあるのでしょうか。平田聡氏(林原類人猿研究センター)からは「チンパンジーの知性を探る」と題して,チンパンジーの行動と知性について,特に社会的な場面で発揮される特徴に焦点をあてて講演いただきます。
第3のアプローチは,先史人類学のアプローチです。現生のヒトとチンパンジー・ボノボの中間に位置づけられる猿人アルディピテクス・ラミダスに関する最新の研究成果は,サイエンス誌を通じて全世界に衝撃を与えました。諏訪元氏(東京大学総合研究博物館)から「ラミダス猿人からみた人類進化:チンパンジーはヒトの祖先型のモデルたりうるか」と題して,ヒトとチンパンジーの共通祖先の姿へ,ラミダス猿人研究を通して迫る内容でご講演いただきます。
チンパンジーの知性を探る
平田聡(林原類人猿研究センター主席研究員)
ゲノムを通して我が身を知る~ヒトとチンパンジーの間にあるものから
郷康広(京都大学霊長類研究所助教)
ラミダス猿人からみた人類進化:チンパンジーはヒトの祖先型のモデルたりうるか
諏訪元(東京大学総合研究博物館教授)