霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: B-2
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口頭発表
出生前後における頭蓋骨成長様式の変化
*矢野 航, 高野 智, 江木 直子, 荻原 直道
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抄録
 近年、CTスキャナを用いた3次元形態情報の取得とリーマン幾何学の応用により、成体に至る成長様式を近縁種間で定量的に比較することが可能となった。その結果、出生後の成長では神経頭蓋に比べて相対的顔面頭蓋が発達していく成長様式が広範な霊長類分類群で観察された。矢野ら(2010)はそれまで、ほとんど行われていなかった出生前(胎児期)の成長をニホンザル(Macaca fuscata)の液浸資料を用いて導出し、やはり、成長のベクトルとして相対的な顔面頭蓋の発達を報告した。出生前後でまったく同じ成長様式が保持されいるのか否かは、しかしこれまで報告がなかった。
 本研究は、霊長類の頭蓋形態の出産時を挟んだ成長様式を横断的に導出し、出生前後でまったく同じ成長様式が保持されているか否かを検証した。資料にはニホンザルの32体の胎児液浸資料と105体の生後の乾燥骨格資料、計137体を用いた。乾燥骨格資料は、幼体からワカモノ、成体までの資料を用いた。野生群と飼育群の区別は行わなかった。各資料はサイズに応じてマイクロCTスキャナあるいは医療用CTスキャナを用いて撮影された。再構成されたサーフィス像の上に計54点の特徴点の3次元座標値を取得し、3次元幾何学的形態測定法(Geometric morphometrics)によって、形状変異が定量化され、主成分分析によって主要な変異傾向に分解された。各主成分のうち、サイズによる回帰式を成長傾向とした。その結果、第1主成分と第2主成分が成長傾向を示す軸であった。相対的な顔面頭蓋の発達を示す第1主成分は出生前後でほぼ同じ傾向を保持していたが、第2主成分は出生前後で明らかに異なる成長傾向を示した。第2主成分は顔面の発達の相対的な方向を示しており、出生時に産道のサイズおよび形状が胎児の頭蓋骨成長の制約条件となっている可能性がある。
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© 2011 日本霊長類学会
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