霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: B-22
会議情報
口頭発表
タイワンザル(Macaca cyclopis)とニホンザル(Macaca fuscata)の交雑個体に見られる尾長を決める要因
*濱田 穣東島 沙弥佳毛利 俊雄川本 芳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 [目的] マカカ属内は尾長の変異が大きく、寒冷気候や位置的行動などへの機能適応が要因に挙げられる。尾長は尾椎の数と各尾椎の長さで決定される。一つの個体で、尾椎の長さはさまざまだが、尾椎長プロフィール(椎骨順の長さパターン)は個体間に共通性があり、少数のパラメータで尾長が表せるかもしれない。この推測を検討するため、異なる尾長を持ち、系統関係の遠近様々な種間で比較した。 [材料と方法] 和歌山県の近縁のニホンザル(Macaca fuscata)とタイワンザル(Macaca cyclopis)の間の交雑個体、オトナ84個体の骨格標本とX線写真を用いた。共通尾椎長プロフィールの存在、および尾長への関与を検討した。 [結果] 交雑個体で共通する尾椎長プロフィールが認められた:最初の2・3尾椎は短くて違いが少なく、次の2-3尾椎は遠位に向かって長さを増やし、第5もしくは第6尾椎が最大長を示す。それ以降、順序と伴に直線的に長さは減る(約2mmずつ)。個体変異は最大長、および最長尾椎の遠位で数個の尾椎における短縮がそれ以遠よりも弱い(プラトー)かどうかにある。相対尾長を説明する尾椎数による単回帰式と尾椎数と最大長の多重回帰式で決定係数を比較すると、最大長の追加で11.6%の向上が見られた。 [考察]交雑個体の尾椎長プロフィールは、トクモンキー種群の長尾種に同様に見られるが、中尾種のアッサムモンキーや短尾種のチベットモンキーでは第4尾椎まで長さが増さない(Chakraborty et al., 2007)。ブタオザル類でも異なったパターンで尾が短くなったと思われる。尾はマカカ属で、種群ごとに短縮化したと考えられるが、その短縮化にあたって、プロフィールと尾椎数の改変があるようである。 [参照文献]:Chakraborty et al., 2007. Molecular Phylogenetics and Evolution. 44(2): 838-849.

著者関連情報
© 2011 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top