抄録
演者らは,これまで 2つのニホンザル餌付け個体群(大分県大分市にある高崎山群と宮崎県串間市にある幸島群)を対象に,給餌量の差が,体重,体長および出産率などにどのような違いをもたらすかについて,比較研究を行ってきた.その結果,給餌量の多い高崎山群の個体(成熟メス)は,幸島群の個体(成熟メス)よりも体重が重く,高い体格指数を示し,ほとんどすべての年齢において高い出産率を示すことを明らかにしてきた.また,幸島群の個体は,高崎山群の個体に比べて,体重の年変動が顕著であり,体重の増減は個体間で同調していることがわかった.これは,幸島群では相対的に給餌量が少ないために,自然食物の豊凶が体重に影響を及ぼしやすいことによるものであると推測している.本発表では,食物摂取に関して,餌獲得量に関する結果について発表する.高崎山群では,サツマイモとコムギを投与しているが,サツマイモでは獲得量に順位による差が認められないものの,コムギでは上位個体は下位個体よりも多く獲得していることが明らかになっている.一方の幸島群(夏季はコムギとダイズを,夏季以外はコムギのみを投与)では,コムギ獲得量についての予備的な結果より,その順位格差は高崎山群のそれよりも小さい傾向が示唆された.以上の結果を整理し,2個体群の餌獲得・栄養状態・出産成績に関する全体的な比較を行う.