霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: F3-2
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口頭発表
三本杭の落葉広葉樹林におけるニホンジカ排除柵の効果~剥皮被害防除と林床植生回復~
*奥村 栄朗*奥田 史郎*酒井 敦
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抄録
 高知・愛媛県境の三本杭(1226m)周辺の国有林内には,四国における南限のブナ林を含む落葉広葉樹天然林が約 800ha残され,人工林化の著しい四国山地において重要な保全対象である.ここで,2000年頃からササ原の裸地化,林床植生の消滅,剥皮被害の増加等,ニホンジカによる森林の衰退が顕著となってきた.そこで,落葉広葉樹林内にネット柵を用いたシカ排除実験区を設定し,剥皮被害の防除と林床植生の回復の状況を調査した.
 実験区には標高 1000m付近の林内で林床植生の状況の異なる3ヶ所を選び, 2007年 1月にネット柵(25 ×25m)を設置,柵内と隣接する柵外に調査区画を設定した.実験区 No.1の林床は,本来スズタケが優占していたが,設定時には消滅していた.No.2,No.3はミヤコザサが優占し,No.2では消滅に近い状態まで衰退していたが,No.3では 15cm程度まで矮性化しているものの,林床をほぼ覆っていた.いずれの実験区でも上木の剥皮害は激しく,小径木を中心に多くの枯死木が発生していた.
 2012年までの毎年,上木の剥皮被害と枯死,林床植生を調査した.新たな剥皮被害は柵外のみで,また枯死木は柵内外ともに,ほぼ毎年発生した.柵設置以前の被害による柵内の枯死が 2012年にも依然として発生していた.柵内の林床植生の回復程度は実験区の間で大きく異なった.No.1ではスズタケの回復は見られず,シカの採食に強い特定の草本やシダを除くと,植生の回復はきわめて遅い.No.3ではミヤコザササの回復が顕著で,設置後3~4年で稈高が約 1mに回復,密生状態になったため,設置当初に増加したササ以外の植物種が被圧されて減少した.No.2でもミヤコザサは徐々に回復している.木本稚樹は定着するものが少なく,各調査区とも個体数の増加は認められないが,No.3以外の柵内では萌芽枝の成長により木本の積算高が増加している.
 なお,この研究の一部は四国森林管理局の調査事業委託によるものである.
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© 2013 日本霊長類学会
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