抄録
シカによる林業被害は各地で報告されており,大きな社会問題となっている.被害軽減技術の開発も強く求められており,体制の整備を含めた実効性のある手法開発が望まれている.特に,林業では生産現場とシカ生息地が重複していることから,被害軽減には個体数削減が必須であり,各地で捕獲による被害管理が進められている.しかし,捕獲による被害軽減効果を検証した事例はほとんどない.そこで本研究では,特定の区域内において誘引狙撃法による繰り返し捕獲を実施し,植栽した苗に対する食害率から被害軽減効果を検証した.調査は宮崎県椎葉村の九州大学宮崎演習林内において,2010年(捕獲前年),2011年(捕獲実施年),2012年(捕獲翌年)に行った.半径 0.5kmの捕獲区域を中心に半径 3kmの範囲内に 5m四方の植栽区を 20カ所設置し,毎年 4月にスギ苗を 20本ずつ植栽した.シカによる食害の有無を毎年 11月に調査し,距離による食害率の変化について回帰式を得た.また,半径 1.5km内の植栽区 10カ所に自動撮影カメラを設置し,シカの出没状況を記録した.誘引狙撃法による捕獲は 2011年に実施し,捕獲区域内に設置した狙撃場 6カ所において,4,6,10月に捕獲を行った.捕獲時における単位捕獲努力量(人日)あたりの捕獲数,累積捕獲数,目撃数に対する捕獲数の割合(捕獲率)を用い,除去法により捕獲前年のシカ個体数を推定した.3回の繰り返し捕獲の実施により,合計 11頭のシカを捕獲除去した.除去法により推定した捕獲前年の個体数は 25頭であり,区域内の個体数は捕獲により 56%に減少したと推定された.回帰式から算出した区域内の食害率は,捕獲前年と比較して捕獲実施年で 64.8%に減少した.捕獲翌年は 81.3%に増加したが,捕獲前年より低いまま維持された.シカの出没頻度も捕獲実施により減少した.以上のことから,森林内の特定区域における繰り返し捕獲により,植栽苗に対する被害を軽減できることが示された.