霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-52
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ポスター発表
北海道に漂着したコマッコウ Kogia breviceps の胃内容物
*松田 純佳*松石 隆*田島 木綿子*佐々木 基樹
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抄録

 コマッコウ Kogia brevicepsは全世界の温帯から熱帯域に生息している.日本では本州の太平洋側でしばしば漂着報告があるが,北海道では現在まで 5個体しか漂着していない.また,日本周辺海域における食性情報は皆無である.本研究では 2011年 9月と 2012年 5月に北海道太平洋側に漂着したメス 2個体の胃内容物調査結果を報告する. 胃内容物は,頭足類に関しては顎板,魚類に関しては耳石を用いて可能な限り下位の分類群まで種同定を行った.主要餌生物を特定するため,餌生物の個体数組成(N%)を求め,頭足類の外套膜長を嘴刃長より推定した. 胃からは 8科 8種の頭足類(テカギイカ科,ホタルイカモドキ科,ゴマフイカ科,ユウレイイカ科,アカイカ科,ムチイカ科,ツメイカ科,サメハダホウズキイカ科)と 1科 1種(タラ科)の魚類が出現した.最も個体数の多かった餌生物はテカギイカ科イカ類 Gonatidae spp.であり,出現した餌生物の 76.1%を占めた.餌生物のサイズ組成は,最も小型の餌生物が外套膜長 29.4mmのツクシユウレイイカ Chiroteuthis (Chirothauma) calyxであり,最も大型の餌生物が外套膜長 420.2mmのキタノスカシイカ Galiteuthis phylluraであった.結果より,コマッコウは北海道において主に沖合の頭足類を利用しているが,スルメイカTodarodes pacificusとホタルイカ Watasenia scintillansも餌生物種として出現したことから,沿岸と沖合両方の海域で摂餌を行っていることが明らかになった.

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© 2013 日本霊長類学会
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