霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-65
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ポスター発表
北海道十勝地方におけるエゾジカおよびキタキツネによる河畔林利用の季節変化
*大熊 勳*吉松 大基*高田 まゆら*柳川 久
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抄録

 河畔林は野生動物が利用するコリドーとして機能する.コリドーは断片化された生息地を連結するほか,食物供給や休息の場としても機能することで生物多様性の保全に貢献している.しかし農業景観におけるコリドーは野生動物の侵入および移動の場となることから,農業被害や人身事故などの人と野生動物との軋轢を助長する側面を併せ持つ.二律背反的なコリドーの機能のあり様を模索することは,農業景観における野生動物との共存を実現する上で重要であると考えられる.そこで本研究では,北海道十勝川水系河畔林に自動撮影カメラを設置し,北海道において被害が顕著なエゾシカ (以下,シカ )およびキタキツネ (以下,キツネ )の撮影頻度と景観構造との関連性について調べることを目的とした.
 2011年 5月より 37台の自動撮影カメラを河畔林沿いに 5kmの間隔を設けて設置し,河畔林を利用する中・大型哺乳類の撮影頻度および撮影時刻を記録した.撮影頻度に影響する要因として,林内の通行の容易さを表す指標として,カメラ設置位置周辺において下層植生被度,胸高断面積合計などの局所環境の調査を行なった.さらに,GISを用いてカメラ周辺を中心としたバッファを設定し,内部に含まれる森林面積や市街地率,耕地面積などの景観構造を調査した.以上の結果から,撮影頻度を応答変数,局所環境および景観構造の要因を説明変数とする一般化線形モデルを構築し,シカおよびキツネに関して,それぞれ季節 (春:3~5月 夏:6~8月 秋:9~11月 冬:12~ 2月 )ごとに解析を行ない,モデル選択を行った.各バッファサイズにおいて選択されたモデルのうち,最も AICが低いバッファサイズのモデルを各哺乳類の季節ごとのベストモデルとした.解析の結果,シカとキツネのいずれもベストモデルの空間スケールおよび説明変数が季節ごとに異なった.同様に,各動物の撮影時刻にも注目して考察した.

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© 2013 日本霊長類学会
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