霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-64
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ポスター発表
リベリア共和国パラにおける野生チンパンジーの道具使用行動
*大橋 岳
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抄録
 ギニア共和国ボッソウでは 1976年以来,野生チンパンジーの調査がおこなわれてきた.アブラヤシの種子を台となる石のうえに置き,別の石をハンマーとして叩き割るなど,多くの道具使用行動がしられている.近隣の群れではどのような行動がみられるのか.そもそもボッソウ近隣のどこにチンパンジーがすんでいるのか.ボッソウはリベリアとの国境から近い.しかし,内戦などの影響もあり,リベリア内で調査が行われた例は,海外の研究者を含めてもきわめて少なかった.実際にボッソウのチンパンジーが国境をこえてリベリアの森を訪れたのをきっかけに,2006年よりリベリア共和国ニンバ州にて広域調査をおこなってきた.ボッソウから 100_以内の森においても,チンパンジーを狩猟対象としない地域が存在し,そのなかでパラという地域が観察をするうえで有望な地域だと考えられた.足跡や食痕などの痕跡をたよりに,できるだけ直接観察を試み,ふたたびチンパンジーが訪れると予想される地点にはセンサービデオカメラを設置した.その結果,ボッソウでみられるアブラヤシの種子割り行動と杵つき行動が直接観察や自動撮影された動画から確認された.これらは当該地域でひろくみられる行動の可能性も高いが,とくに後者の行動はボッソウでのみ,しかも長期調査開始後 10年以上を経て確認されていたことを考えると,それ以降にボッソウのチンパンジーと交流があった可能性も考えられる.また,今回の調査で,他の調査地では全く報告されていない道具使用行動を発見した.板根たたきディスプレーにおいて,パラのチンパンジーは板根へ石を当てて大きな音をたてた.今後,石の選択やその持ち運び,行動パターンを調べるとともに,板根に残された痕跡の分布によって,この行動がどれほど広がっているのか,彼らの遊動域などを考慮に入れながら明らかにしていきたい.
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© 2013 日本霊長類学会
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