霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-73
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ポスター発表
ツキノワグマの秋の餌資源~クマノミズキに注目して~
*中村 朋樹
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抄録

 ブナ類,コナラ類などの堅果類の結実変動がクマの出没変動と強い関係が見られる地域では,堅果類の結実状況を把握することでクマの大量出没を予測する方法が見られる.しかし,西中国地方に生息するツキノワグマの秋の食性を見てみると,クリ,コナラなどの堅果に加え,液果の利用割合が高く,ミズキ属が主要な餌資源と考えられる.そのため,西中国 3県(広島県,島根県,山口県)では,クマの出没予測の基礎データ収集のため,2012年度からブナ,ミズナラ,クリ,コナラ,クマノミズキを調査木として豊凶調査を開始した.ブナ,ミズナラはクマの生息地内の特定地域,クリ,コナラ,クマノミズキは生息域全範囲をカバーするように調査地とした.
 本研究では,クマの餌資源としては他地域であまり評価されていないクマノミズキの結実について注目した.1)目視調査と単木あたりの全花序との関係,2)花序あたりの果実数がどのように変化するかを調べるために, ①樹冠全体を双眼鏡で観察し,20秒間花序数をカウントする目視調査, ②樹冠全体を観察して単木あたりの全花序をカウントする全花序調査, ③花序あたりに付いている全果実をカウントする果実数調査を行った.2012年には 10本で目視調査と全花序調査,2013年には 10本について 3つの調査すべてを行っている.
 2012年度の結果,目視調査と全花序調査,花序あたりの果実数と目視のカウント数に正の相関が見られた.また,2013年度の途中結果であるが,目視調査では 1秒間にカウントできる限界値があり,ある一定以上の評価ができないと示唆された.この閾値以下では,目視調査と果実数調査を行うことでクマノミズキの資源量を把握できると考えられる.

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© 2013 日本霊長類学会
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