抄録
北海道では,近年ヒグマ Ursus arctosによる農業被害や人身被害の増加に伴い,ヒグマの有害駆除数が増加している.北海道東部においても,農地付近でのヒグマの出没や農業被害が大きな問題となっており,その原因の 1つとして農作物やエゾシカ Cervus nipponの駆除残滓がヒグマを個体群の中心部から農地やその周辺に誘引していることがあげられている.そこで本研究では,北海道東部地域において 2007~ 2008年にヒグマの分布中心部から周縁部にかけて広範囲にヒグマの糞を採集し,その位置情報と糞内容物情報を用いてヒグマ食性の空間パターンに影響を与える環境要因と空間スケールを明らかにする.特に,ヒグマを農地やその周辺に誘引する原因であると考えられている農作物(トウモロコシ,ビート,小麦等)とシカ駆除残滓の利用に注目し,糞中の農作物およびシカ駆除残滓含有割合を目的変数,糞採取地点から農耕地までの最短距離,糞採取地点周辺の森林面積および河川総長を説明変数として解析を行った.以上の結果から,ヒグマが人為的な餌資源をどのような条件で利用しやすいか,またヒグマの食性が自然資源から人為的な餌資源へ変化する空間スケール等を検討する.