霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-88
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ポスター発表
北海道厚岸・大黒島におけるゼニガタアザラシの雄レッド個体の経年変化
*片貝 耕輔*村井 一紀*田村 善太郎*小林 万里
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抄録
 ゼニガタアザラシ( Phoca vitulina stejnegeri)は,北海道で,唯一周年同じ岩礁に定住するアザラシである.北海道で 2番目に大きな上陸場である厚岸・大黒島では,体毛の一部が赤褐色である個体(以下,red 個体)が毎年観察されているが,どのような個体が red個体になるのかだけでなく,赤褐色になる期間なども明らかではなかった.しかし近年の我々の研究により,大黒島の red個体は,雌個体が雄個体よりも圧倒的に多いこと,赤褐色は換毛期を過ぎると消え,次の繁殖期には赤褐色が付着していることを明らかにしてきた.さらに,同一個体が毎年 red個体になっているのか,新しく赤褐色になる個体が存在するのかを明らかにするために,本研究では,個体識別のしやすい雄個体に注目した.この雄個体の斑紋模様を利用した個体識別の結果から,red個体として発見されていない年の繁殖期に毛皮が赤褐色でない同一個体が確認されるかを調べ,赤褐色になっている面積や濃さなどの年変化を明らかにし,red個体になる機序を考察した.期間は,2007年~ 2013年の 7年間とし,ゼニガタアザラシの繁殖期調査で撮影された個体識別用の写真と 300mmで撮影した上陸個体の写真を使用した.
 これら写真から個体識別を行った結果,red個体の雄は 7年間で最大 8個体が発見された.このうち,7年間全ての年に確認された個体は 2個体,5年間で確認された個体は 1個体,4年間で確認された個体は 1個体,3年間で確認された個体は 1個体,それ以外は単年度のみ確認された個体であった(現段階の暫定結果).全個体において,red になる部位は,主に頭部だったが,複数年で同一と判別された個体は,赤褐色部位の色の濃さや,赤褐色になる範囲の変化が見られた.それゆえ,red になる個体は,先天的よりも後天的な要因が関わっている可能性が高いと推測された.
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© 2013 日本霊長類学会
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