霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-116
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ポスター発表
勝山ニホンザル集団における3頭毛づくろ
*中道 正之*山田 一憲
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抄録
 霊長類の多くの種を対象にして,毛づくろいは様々な観点から分析されており,膨大な数の研究が発表されている.しかし,社会的毛づくろいの研究は 2頭間の毛づくろいを対象にした研究であり,3頭以上の個体が同時に参加した毛づくろいに関する分析は,著者の知る限り全くないと思われる.稀ではあるが,3頭以上のおとなが同時に毛づくろいをしている場面を目にすることはある.そこで,本研究では,勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市)のオトナメスを対象にして,3頭間の毛づくろいを収集し,どのような個体間で行われているのかなどについて検討した.
 2008年から2012年までの 5年間に,毎年 4月から 9月までの 6か月間に,総計125日間にわたり,集団が餌場に滞在しているときに毛づくろいエピソードを記録した.オトナオスが加わった毛づくろいは少数であったため,分析から除外した.観察期間中に記録した 3頭毛づくろいは125回であり,同期間に記録した 2頭毛づくろいの 1.1%に過ぎなかった.また,継続時間を測ることができた 3頭毛づくろいでは,その大多数が 1分以内に終了しており, 2頭毛づくろいよりも短時間に終了する傾向が強い.
 3頭毛づくろいを個体 Aが個体 Bに,さらに個体 Bが個体 Cに行うタイプを直線型とし,Aと Bが同時に Cに行うタイプを三角型としたとき,どちらの場合も,3頭のうちの 2頭が母と娘である場合は約 75%とほぼ同じ割合であった.直線型では,互いに直接の毛づくろいをしているA-B間およびB-C間の血縁度に差はなかったが,直接に身体が触れ合っていないA-C間の血縁度は,A-B間,B-C間よりも低いものであった.三角型では,逆に,直接に毛づくろいをしているA-C間およびB-C間の血縁度よりも,直接の触れ合いのないA-B間の血縁度の方がより高いものであった.
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© 2013 日本霊長類学会
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