霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-158
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ポスター発表
アライグマ低密度生息下における新しい捕獲技術としての巣箱型ワナの開発
*島田 健一郎*池田 透
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抄録
 本研究は,日本全国で問題化している外来アライグマ問題の解決に向け,アライグマ侵入初期と対策後期の低密度生息下においても効率的に捕獲できる捕獲技術を開発・運用することを目的とした.
 北海道においては野外からのアライグマの排除を目標に,道や市町村が主体となり捕獲事業が行われている.しかし,対策後期や侵入初期の生息数が少ないエリアでは,一般に使用されているエサを誘引に用いる捕獲方法は,エサ補充や混獲動物の放獣のための見回りコストばかりがかかり,捕獲効率が著しく低下する.そのため,ほとんどの事業では短期間に多くの個体を捕獲するために,比較的生息数の多いエリアだけを選択して捕獲が行われるため,生息数を低減できても,生息数をゼロにできた地域はない.すなわち低密度生息下における効率の良い捕獲方法の開発が急務となっている.
 アライグマは繁殖や休息に樹洞を利用するが,冬季には納屋や倉庫,屋根裏や軒下の人工物を利用することが多いとも言われている.そこでアメリカで販売されているアライグマ用の巣箱をもとに,ワナ機能を持った巣箱型ワナを開発し捕獲可能かを検討した.
 実際にはまず,販売されている巣箱を野外に設置し,実際に利用することを確認したうえで,アライグマが選好的に利用する形状(巣箱入口径・容積)を飼育個体を用いて決定し,次にワナ機能を持たせた試作機を作製して,飼育個体が捕獲可能であることを検証した.
 本発表においては,飼育個体を用いて捕獲が成功した試作機と,アライグマが捕獲されると捕獲実施者に知らせることができるシステムを実際に野外に設置して,捕獲の可否,および箱ワナと巣箱型ワナの捕獲に係るコスト比較を行った.
 本研究の一部は平成 23~ 25年度環境省環境研究総合推進費により実施された.
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© 2013 日本霊長類学会
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