霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-174
会議情報

ポスター発表
アライグマ (Procyon lotor) の経口避妊ワクチン開発の試み (1)
*淺野 玄*峰本 隆博*小林 恒平*鈴木 正嗣
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】アライグマは防除実施計画の認定・確認が最も多い特定外来生物であるが,わが国では根絶を達成しえた地域はまだない.その一因は,農作物被害の防除を目的とした箱罠捕獲が中心となっている地域が多く,計画的・効率的な個体数管理が実現されていないためであろう.この現状を打開する一助として,本種の効率的な個体数抑制のため,捕獲をすることなく免疫学的に繁殖を抑制しうる経口避妊ワクチンの開発に向けた基礎研究を行ってきた.とくに,抗原候補として受精に関与する卵透明帯(Zona pellucida; ZP)蛋白に着目しており,本大会ではその塩基配列の解読結果や今後の課題を報告したい.
【方法】既報のネコ目(イヌ,ネコ,マングース,オコジョ)における ZP蛋白の 1種である ZPCの塩基配列を基にプライマーを作成し,アライグマの卵巣を用いて RT-PCR法を行った.さらに RACE法によりアライグマの ZPCの完全長配列を解読し,既報の他種(イヌ,ネコ,マングース,オコジョ,マウス,ヒト)の同蛋白塩基配列との相同性を比較した.また,同配列のうちで精子卵結合部位と考えられるアミノ酸配列 23AAを解明して他種との相同性も比較した.
【結果・考察】アライグマの ZPC完全長配列 1,279bpが明らかになった.また,同配列における他種との相同性は,イヌ86.4%,ネコ82.9%,マングース86.4%,オコジョ92.2%,マウス72.2%,ヒト78.5%であった.精子卵結合部位のアミノ酸配列 23AAでは,イヌ19AA,ネコ11AA,マングース16AA,オコジョ18AA,マウス4AA,ヒト 8AAでのみ一致し,同部位はワクチン抗原として種特異性を有しているものと考えられた.今後は,in vivoによる避妊効果および同所性に生息する在来他種への影響の評価,野外での効果的な投与方法などについても検討する必要がある.

著者関連情報
© 2013 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top