抄録
Dehydroepiandrosterone-Sulfate(DHEAS)は主に副腎から分泌され,ヒト血中に最も多く存在するステロイドホルモンである.
DHEASはテストステロンやエストロジェンの前駆物質であり,ヒトでは Adrenarcheの発現,老化時の性ホルモンの補充,また,神経ステロイドとしての役割も担っていると報告されている.さらに,ヒト血中 DHEAS量は新生児期に最も多く,その後劇的に減少するが,Adrenarcheの発現に伴い再び増加,20代から 30代にピークを迎え,老化に伴い緩やかに減少することが知られている.しかし,ヒト以外の霊長類では DHEASの役割やその機能に関して確かな結論は得られていない.また,これまでヒト以外の霊長類の DHEAS量測定は血中放射免疫測定法が主で,そのため,採血ができない野生個体では測定も不可能であった.さらに,サンプル採取に伴うストレスにより DHEAS量の変化も考えられ,非侵襲的な測定法の確立が求められる.そこで,ELISAによる糞中尿中 DHEAS測定法の確立を目的として実験をおこなった.
3頭の成熟メスニホンザルに,DHEASを投与し,その後経時的に血液,尿,糞を採取,それらのDHEAS量を測定した.ELISAは DHEA-3-Succinate-BSAのウサギ免疫抗体と DHEA-3-Glutarate-HRPを用いた競合反応によっておこなった.
その結果,本法によりニホンザル尿中糞中の DHEAS量が測定可能であることが分かった.また,糞中尿中の測定値は血中の DHEAS量とよく相関していた.これらのことから,本法を用いてヒト以外の霊長類の DHEASの役割や機能についての研究が進むことが期待される.