霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-188
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ポスター発表
ハタネズミの系統地理 -火山と気候い影響を受けたハタネズミ-
*松浦 宜弘*疋田 努*本川 雅治
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抄録
 ニホンハタネズミは,本州,九州,佐渡島に分布する草食性の小型哺乳類である.その生息地は,田畑や牧草地,河川の氾濫源など草原が維持された場所が多く,本種は日本では数少ない草原生哺乳類である.現在の日本では,森林が国土の約 70%を占め,草原は,わずか1%に過ぎず全国に点在している.このような状況で,草原生種であるハタネズミは,遺伝的な分断化が予想されるが,どのような遺伝構造を維持しているかはわかっていない.また,数万年前までは,草原が現在よりも多く存在していたとされるが,九州,本州から佐渡島まで分布域を拡げた,系統地理学的歴史も解明されておらず,これを理解することは,日本の哺乳類の分布変遷を理解する上で重要なことであると考える.そこで,本研究では,分子系統学的手法と生態学的手法を用いて,ハタネズミの遺伝構造と遺伝子流動,ハタネズミが辿ってきた分布変遷を明らかにすることを目的とした.これまでに本州,九州,佐渡島から 25集団,353個体のハタネズミを採取し,ミトコンドリア DNA遺伝子 2座と核 DNAマイクロサテライト遺伝子 4座を用いて,遺伝構造と分岐年代の推定を行った.その結果,佐渡島を除く分布域では,核 DNAで 6系統(九州で 3系統,本州で 3系統),ミトコンドリア DNAで 5系統(九州で2系統,本州で 3系統)に分かれることが明らかになった.また,九州北部と南部の系統の分岐は深く,九州北部系統では遺伝的多様性が低いこと,北日本では,1系統が優占していることが明らかとなった.これらの結果から,九州では,阿蘇の大規模な噴火が分化に大きく影響していること,北日本では,最終氷期の寒冷化によって,分布限界が南下しており,最終氷期後,急激に分布が拡大したことが示唆された.これらの結果と 5月に捕獲した佐渡島の結果を含め,過去にハタネズミの各集団が受けた環境変動とそれに伴う分布変遷について考察を行う.
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© 2013 日本霊長類学会
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