抄録
2011年 4月から,群馬県藤岡市の上越新幹線 1.2kmの区間(以下,藤岡区間)の高架橋の隙間に集結するヒナコウモリ Vespertilio sinensisの出産哺育コロニーの規模と越冬期の利用を調査した.その結果,出産期(6月下旬~ 7月上旬)に約 7,258個体以上の成獣が集結すること,また,越冬期後半である 3月に 358個体以上の利用が確認された.しかし,群馬県の上越新幹線および長野新幹線全線の高架橋区間(約25km)における出産哺育コロニーの分布や厳寒期を通じた越冬地としての利用があるのかは不明であった.そこで筆者は 2012年の出産期に藤岡区間を除く高架橋区間全線で,可聴音で鳴き声が聞こえるか,糞の堆積がみられる隙間すべて(256ヶ所)の内部の写真撮影を行い,集団の有無と個体数を調べた.結果,3次メッシュ毎の集計では,長野新幹線の西部をのぞく,高架橋が通過する大部分のメッシュで集団が確認された.すべてが出産哺育コロニーかの精査は必要だが,確認個体数は 154ヶ所の隙間に 3,406個体以上であった.なお,ヒナコウモリの同定は落下死していた成獣から行った.技術的な課題が残るが,異種(ヤマコウモリとアブラコウモリと推測)の混在はわずかだった.また,藤岡区間では出産期に全隙間(130ヶ所)の内部にいる個体数を写真撮影により計測したが(1,031個体),2011年の目視による出巣観察(7,258個体)よりも大幅に少ない結果となった.越冬期の利用については,藤岡区間の全隙間を対象に 2012年 11月から 2013年 4月まで月 1回の隙間内部の写真撮影を行い,個体数を計測した.結果は 11月 → 117個体,12月 → 207個体,1月 → 87個体,2月 → 74個体,3月 → 178個体,4月 → 427個体と推移し,少数個体が厳寒期を通じて隙間内を越冬地として利用していることが判明した.ただし,越冬期にみられる集団が,出産哺育期にみられる集団と共通するのかは不明である.