抄録
ジャコウネズミ(Suncus murinus)は,現在インド洋 ~東シナ海沿岸の広範囲な地域に分布しているが,古くからの人為的な交易により分布域を広げたとされ,人間活動と動物の分布変遷の関係を調べる上で好適な材料である.野生動物の空間分布への人間活動の影響を解明するための,第一歩として,本研究では,現在の分布域を決定している生態学的要因を,種分布モデル(species distribution model,あるいはニッチモデル)により推定する.
これまでの発表者らの調査および文献から,日本,グアムからアフリカのマダガスカル,タンザニアに渡る,インド洋 ~東シナ海沿岸における,ジャコウネズミの分布情報を収集した.これらの生物分布情報に対して,環境情報としてBioclim,土地利用情報として Global Land Cover Maps (GLCM)を用いて,種分布モデリングを行う.この推定結果を用いて,生息域の連続性を基準とした,原産分布地域と移入分布地域の区分の有効性を検討する.また,潜在的な分布可能域と現在の分布域,さらに,過去の交易の歴史を比較することで,ジャコウネズミ分布に対する人為的な影響について考察する.